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残業時間規制、その憂慮

こんばんは。 ペルダ・コンサルティングの古橋です。

前回は、「違法な長時間労働」について書きました。 会社が従業員に「1日8時間・週40時間」を超えて働かせたり休日労働をさせたりする場合は、事前に「36協定」を結んで労働基準監督署に届け出る必要があります。 そして、延長させることができる労働時間には上限が定められています。 「1か月あたり45時間(42時間)」「1年あたり360時間(320時間)」です。 ※(  )内は、1年単位の変形労働時間制を採用している場合の数字です。

原則として、この上限を超えて労働させることはできません。 ただし、ここに例外が存在します。 それが「特別条項」と言われるものです。 特別条項を締結することにより、年に6回を超えない範囲で、「月45時間」を超えて残業させることができるのです。 そして、この超過時間には、なんと上限が設定されていません。 会社と従業員代表との協定が適正に成立していれば、の話ですが、例えば「年に6回を超えない範囲で月に200時間まで延長することができる」という協定が結ばれ、現に行われていたとしても、少なくとも労基法32条には違反しない・・・ということになってしまいます。

これでは、長時間労働の抑制には何の役にも立っていない。 それどころか、かえって長時間労働を助長するものとの誹りを受けても仕方ありません。 そこで、政府の「働き方改革実現会議」は、残業時間の上限を「月平均で60時間」に抑えるよう、原案をまとめたようです。 繁忙月には100時間までの延長を認めたうえで、年間で月平均60時間を超えないよう、企業に義務付ける方針です。 違反企業には罰則も科されます。 今年中に、労働基準法の改正案が国会に提出される見通しです。

(平成29年1月28日付 日経新聞)

・・・至極もっともな改正だと思います。 特別条項の存在で、労働時間に関する規制は実質「ザル法」となっているのが現状だからです。 企業に強制力を持たせるためには、労働時間に上限を設定うえで罰則を設けることも、やむを得ない措置と言えるでしょう(その罰則がどれくらいの実行力を持つのかは別として)。

でも、そこで考えます。 国は、会社に対して「罰則付きの残業規制」を行います。 会社は罰則を恐れて、従業員に対して月の残業時間の上限を超えないように働くことを求めるでしょう。 そんな中で。 やってもやっても終わらない仕事が、現場にあり続けたとしたら。 みんな仕事しているのに「自分だけ帰れない雰囲気」が、会社にあり続けたとしたら。

結局、「サービス残業」や「持ち帰り残業」が今以上にはびこることになりはしないか。 僕はそう思うのです。 本末転倒、更なる深刻な問題が生まれるであろうことは、想像に難くありません。

国による一方的な残業規制だけでは、日本にはびこる長時間労働の問題は解決しない、と個人的には思います。

今の国会で安倍首相が言うような「残業時間を減らすことで生産性も上がる」というのは、一面で正しいことではありますが、現実はそう単純なことでもないのではないでしょうか。

正に、法による規制だけではない「働き方の改革」「働かせ方の改革」が、企業・労働者の双方に求められているのだと思います。

そしてその実現のために、我々社労士に何ができるのか? よくよく考えなければならない、大きな課題です。

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