top of page

バイトしてもいいですか?

こんばんは。 ペルダ・コンサルティングの古橋です。

4月になりました。 寒い日と暖かい日が交互に訪れて、本格的に春が近付いてきました。 今週はずいぶん暖かくなるようですね。 幸いにも花粉症と無縁な体質のため、単純に春の陽気に胸を躍らせる毎日です(花粉症の方すみません)。

政府がまとめた、働き方改革実現会議の実行計画。 「長時間労働の是正」や「同一労働同一賃金」などが実行計画の目玉として大きく取り上げられています。 その中で、テレワークや兼業・副業の推進といった「柔軟な働き方」にも焦点が当てられています。

兼業や副業については、「原則禁止」とする企業が多数を占めているのが現状です。 本業がおろそかになるとか社内情報流出の危険性があるとか、会社はもっともらしい理由をこしらえて副業を禁止しています。 今回の実行計画では、「原則禁止」から「原則容認」に変更する方針が明確にされました。 厚生労働省が作成する「モデル就業規則」にも、この方針が盛り込まれることが予定されています。 合理的な理由がない限り、会社が副業を制限することはできなくなります。

罰則規定まで設けて残業時間を規制する一方で、長時間労働に繋がりかねない副業を認めるというこの方針には、若干の違和感も感じます。 実行計画では、『副業や兼業は技術開発、起業の手段、第二の人生の準備として有効』としながら、『長時間労働を招いては本末転倒。実効性ある政策手段を講じ、普及を加速させる』としています。

政府がここまでして副業を推すのは何故でしょうか。 理由はいくつか思いつきます。 まず、労働力人口の減少による現場の「人手不足」を、副業や兼業によって解消させようという狙い。 また、政府が企業に求める賃上げにも限界があることから、労働者の自己責任で「ちょっとでも稼いでもらおう」という思惑もあるのかもしれません。

これまで副業には、「会社に隠れてコソコソ行う」ような後ろめたさが、どうしてもありました。 政府の後押しによって堂々とできるようになれば、長時間労働の問題はさておき、歓迎する人が多いのではないでしょうか。 元々、少しでも稼ぎを増やすために自分の判断でやるものなのですから。

ただ、ここでひっかかるのは「労働基準法 第38条」の存在です。

(時間計算) 第三十八条   労働時間は、事業場を異にする場合においても、労働時間に関する規定の適用については通算する。

どういうことでしょうか。 仮に、A事業場で8時間働いた人が、その後B事業場で4時間働いたとします。 この場合、A事業場とB事業場で働いた時間は通算され、「一日12時間働いた」ということになります。 一日の労働時間の上限である8時間を超えていますから、割増賃金の支払いが必要になってくるということです。

この条文は、戦前の「工場法」において定められていた労働時間の通算の定めを踏襲したものです。 昼間はA工場で働いて夜は同じ会社のB工場で働く、というような労働者の保護を目的としています。

また、「事業場を異にする場合」には「事業主を異にする場合」も含まれる、ということが行政通達で明らかにされています。 だから、A事業場とB事業場が全く別の会社・・・つまり本業が終わった後、副業で別の会社でアルバイトをするような場合でも、一日の労働時間は通算され、それが8時間を超えるようなら割増賃金の支払いが必要になるという解釈です。 副業の方の時給が仮に1000円だとしたら、8時間を超えた分については割増分を含めて「1250円」支払わなくてはならないのです。

じゃあ、その割増分は誰が払うのか。 通常は、その労働者と「時間的に後で契約した事業主」に支払い義務があるとされています。 後で契約した事業主は、労働契約の締結時に、その労働者が他の会社で働いているかどうかを確認すべきだからです。

例えば、もともと夕方4時から夜10時まで6時間働いていた人がいたとします。 その人が、朝8時から12時までの4時間、新たに別の会社でアルバイトをすることになった場合。 この場合、朝8時からの会社の方に、割増賃金を支払う必要があるということになります。

・・・うーん。 理屈では確かにそうなるのですが、実際にこれを律儀に守っている会社があるのかと言われると、正直疑問符が付きます。 別の会社で何時間働いているかを管理・把握するのが困難だし、そもそも労働者が正直に今の状況を申告してくれなければ把握しようがないからです。 だいたい、バイトの面接に来た人が「ここで働くと1日8時間労働を超えるので、割増賃金ください」などとぬかしたら、初手から採用されないでしょう。 少なくとも僕が面接官ならその場で丁重にお帰りいただきます。

今回の政府の「副業推し」は、この行政解釈には事実上実効性がない、という判断に基づいているものと考えられます。 ただ一応、条文と行政解釈が存在している以上、今後訴えを起こすような面倒くさい人がでてくるんじゃないかなあと、今から楽しみ・・・もとい心配になるのです。

特集記事
​最近の記事
アーカイブ
カテゴリーから検索
タグから検索
ソーシャルメディア
  • Facebook Basic Square
  • Twitter Basic Square
  • Google+ Basic Square
bottom of page