桜と毒と
こんばんは。 ペルダ・コンサルティングの古橋です。
4月も半ばを過ぎて、すっかり春本番を迎えました。 連日の陽気で、ここ静岡でも桜が満開となっています。
写真は、日ごろランニングをしている長尾川沿いの桜並木です。 普段は夜にランニングをするので周りの景色に目をくれる余裕もあまりないのですが、先日の土曜日の午後、のんびりと散歩しながらお花見をしました。 こんなにきれいな並木道だったんだなあ、と改めて気付かされます。
ところで、桜の満開の下に長くいると気が狂う、とよく言われます。 これは決して理由のないことではありません。 桜の花の花粉には「エフェドリン」という物質が含まれています。 エフェドリンは、漢方医学では伝統的に喘息や気管支炎の治療薬として使われてきました。 心臓の薬にも使われますが、それ以外に「覚せい剤(メタンフェタミン)」の原料としても知られています。 桜の下にいると異様に気分が高揚するのは、このエフェドリンの作用と言われています。 もっとも、単にお酒の飲みすぎというのもあるのでしょうが。
そういえば、「毒と薬 表裏一体」というサイエンス記事が、4月9日の日経新聞に掲載されていました。 一般的には毒として知られる物質が、実は薬としても利用され人の役に立っていることがあります。先のエフェドリンのように、同じ物質が薬にもなり毒にもなる、という例は数多くあります。
つまり毒と薬はコインの裏表なのである、ということが紹介されていました。 というか、薬というのは突きつめて言えばみんな「毒」です。 そのまま飲めば馬でも死ぬような毒を、薄めて薄めて「薬」と成す。 不思議なことだと思います。
花見には付き物のお酒(アルコール)だって、言うまでもなく毒の部類に入ります。
適量を嗜む程度なら「百薬の長」になるでしょうが、度を過ぎれば「キチガイ水」にもなります。
気を付けたいですね(棒読み)。
もうひとつ、その記事でびっくりしたのが、自然界に多く存在する毒の強さです。 最近ニュースでよく聞く「サリン」や「VXガス」。 これらは人間が科学合成した物質の中では最も強い毒性を持つ部類に入ります。
しかし、自然界にはこれより強い毒をもった生物が平気で存在するのです。
致死量で言うと、まずサリンと「コブラ」の毒が大体同じくらいの強さ。 そのサリンの28倍くらい強いのがVXガスで、これでも「フグ毒」と同程度です。 これを上回るのが、南米に生息する「ヤドクガエル」。 これがなんとVXガスの10倍も強い致死量を誇るのです。カエルのくせに。
そして猛毒界の絶対王者として君臨するのが「ボツリヌス菌」。 こいつが作る毒素は、VXガスのなんと「5万倍」の強さです。 どのくらいの強さかというと、たった1gで大の大人100万人を殺せるのだそうです。
強さのインフレがドラゴンボール並みですね。
一方で、このボツリヌス菌が作る毒素を利用して、脳卒中による後遺症や脊椎損傷による運動障害の治療に使う「ボツリヌス療法」というものもあるのだとか。
人は毒をうまく利用して、病気の治療などに役立ててきました。 自然界に存在する毒のえげつなさと、そんな猛毒をも利用してしまう人間の叡智と貪欲さには、驚くばかりです。
ところで、前述のヤドクガエル。 名前の通り、弓矢に塗る毒に利用されてきたため、このように命名されています。 ただ、彼らは別に毒矢に使われるために生まれてきたわけでもないのに人の勝手でこのように命名されているわけで、当事者が聞いたらきっと気分を悪くするだろうと思うのです。 俺たちは別に人間の都合で毒をぶんまいてるわけじゃないぜ、と。
もっとも、「食用ガエル」よりかはマシかもしれません。 「ただ人の食糧となる前提で付けられた」そのネーミングに対して、常日頃から「気の毒な名前だなあ」と思っていたので。
満開の桜の下、そんなこんなを取り留めもなく考えているうちに、土曜日の午後は暮れてゆくのでした。