天然無能
こんばんは。 ペルダ・コンサルティングの古橋です。
米グーグル傘下のディープマインド社が開発した囲碁AI「アルファ碁」が、中国の世界最強棋士、柯潔(カ・ケツ)九段に3連勝したというニュースがありました。 アルファ碁は昨年3月、韓国の強豪棋士を破って話題になりましたが、驚異的なスピードで更なる進化を遂げていたのです。
敗れた柯九段は 「人間とAIの差を一個人で補うことはできない」 「アルファ碁は完璧すぎた。苦しくてたまらなかった」 とのコメントを残しました。
囲碁というゲームにおいて、AIはついに人間の能力を上回りました。 でも、AIに人間が勝てないからと言って、囲碁や将棋の魅力が半減するわけではありません。 例えばフルマラソン。
現在の世界記録は2時間3分23秒です。この記録に対して「車を使えば1時間もかからないのに」などという人はいないはずです。 それと同じことではないでしょうか。 AIと人間のどちらが優れているか?という議論はあまり意味がないことのような気がします。
ディープマインド社のデミス・ハサビスCEOは
「どちらが勝ったにしても“人間の勝利”であることに変わりはない」
と話しています。 AI技術の開発は、囲碁や将棋で人間に勝つことだけを目標としてきたわけではありません。 車の自動運転、難病の治療法の発見、エネルギー問題の解決などへの応用こそが期待されている技術です。 だから、前人未到の領域にたどり着いた人間の叡智をこそ喜ぶべきなのだと思います。
ところで、アルファ碁はここでいったん開発を終了し、囲碁界からは「引退」するのだそうです。 先に書いたこととは矛盾しますが、「勝ち逃げ」されたみたいでちょっと悔しいですね。
予めルールの定まった世界では、AIは人間の処理能力を遥かに凌駕する実力を発揮します。 我々社労士の業務も、やがてはAIに置きかえられる日が来るのかもしれません。 例えば電子申請で書類を提出した場合、それを実際に処理するのは今のところ事務センターの職員さんです。 当然、センターが休みの土日は処理してくれませんし、夕方5時以降に行った申請の審査は翌日に回されます。 申請に不備があったときに電話をかけてくるのは人間ですし、それを直してくれるのも人間です。 この辺の処理がAIによって完全に自動化される日も、そう遠くない未来なのでしょう。 (もしかすると、僕らが気付いていないだけで既に入れ替わっていたりして・・・)
では、人間にしかできないサービスとは何か。 社会保険労務士は、企業を動かす「ヒト・モノ・カネ」のうち唯一「ヒト」を専門に扱う士業です。 そして、決して「ルール通り、法律通り」には動かないのがヒトです。
社労士の端くれとして、常に考えていかなければならない命題のひとつであると思います。
さて。 話は変わって今年の正月のことです。 従妹のところの子(たー君・5歳)と「オセロ」をした僕は、激しい接戦の末に負けました。 言っときますけどガチの勝負です。 僕がバカなのか、たー君が天才なのか。恐らく後者でしょう(そうあってほしい)。
勝って無邪気に喜ぶ彼の、素直な笑顔を前に僕は、
「いや、このくらいの年の子って、負けると勝つまでやりたがるからさ」 「いい勝負で負けてあげるのって結構難しいよね」
などと、誰も聞いてないことをベラベラしゃべってました。
いいかい。君はこんな大人になるんじゃないぞ。 僕は心の中で、たー君に呟いたのでした。