生産性革命と私
こんばんは。 ペルダ・コンサルティングの古橋です。
迫りくる年の瀬を、イルミネーションに華やぐ街並みなどではなく「年末調整の茶色い封筒」から感じる今日この頃です。 社労士としては正しい。 人としては若干の潤い不足感が否めません。
そんな身も心も乾燥しがちな季節。 先日、社労士会主催の研修会に参加してきました。
テーマの一つが「生産性向上の事例と手法」。 政府が推し進める「働き方改革」と「生産性革命」なる取り組みにベストマッチした話題です。
印象に残ったのは、 「働き方改革は従業員にとってバラ色ではない」 という言葉です。
どういうことでしょうか。 働き方改革の本質は、「従業員が楽になる」ことではありません。 限られた時間で高い生産性を上げることを迫られるものだからです。 フルマラソンで例えるなら、ただの完走ではなく「サブ4(4時間以内でゴールすること)で完走」することが求められるものです。
先日のジュビロ磐田ハーフマラソンを2時間10分かけてようやく完走できた自分としては、この例え痛いほど身に沁みました。 そこに従業員の幸福は決してない。
だから、「生産性の向上」はあくまでも通過点に過ぎず、それを達成したうえで「従業員が気持よく汗を流して働ける」環境を築くことが本当の意味での「働き方改革」である、というわけです。 目からうろこが300枚くらい落ちました。
研修では、生産性を上げるための取組事例として様々な手法が紹介されました。 ある会社では、社内便の宛名に「様」を付けるのをやめたそうです。 これで2秒短縮できる。 2秒かよ、とその会社の誰もが思ったそうですが、実はこういう小さい積み重ねから無駄な業務を削減していくことが大事で、実際「様」を付けないようにしたら2秒の貴重さが実感できたのだそうです。
また、1日8時間働くとして、その1%は何分でしょうか。 1日8時間は480分ですから、答えは4.8分。約5分です。 従業員100人の企業で、全員が5分の時短を行ったとした場合。 5分×100=500分。 つまり、1人雇ったのと同じ効果があるというわけです。 人件費だけ考えても、年間400万円のプラスです。 生産性向上を実現すためには、「たかが5分」という意識をなくすことがまず必要だということが良く分かります。
こういう話を聞くたび、僕は日本初のマイカー「スバル360」の開発秘話を思い出します。 庶民が買える価格設定。 大人4人を乗せてどんな悪路も坂道も走る。 360ccのちっぽけなエンジンでこの目標を達成するために、徹底的な車体の軽量化が図られました。 設計士による指示は実に「1グラム」単位だったそうです。 この困難を乗り越えて初めて、日本初の国民車が誕生したのです。
しかし、こういう話を聞いてただ感心しているだけでは能がありません。 我が事務所の「判子置き」はこんな有様です。
仕切りが壊れて、大小様々な印が無秩序に放り込まれています。 一番良く使う「原口」の認印が他の印に埋もれて、使うたびに指を突っ込んで探らなければなりません。
これを指してまさに無駄というべきでしょう。 早速100均で「仕切り板」を買ってきました。 完成したのがこれです。
よく使う提出代行印や認印は手前に。 余り使わない印は奥の方に。 また、スタンプケースと印を取り出す作業が一度に淀みなく行えるように配置を考えました。
これで省略できる時間は、せいぜい2秒か3秒かもしれません。 けれども、こういう無駄な時間を削減していくことが、きっと生産性の向上に寄与するものだと信じています。
ただし今回の場合、あんまり上手にできたものだからうっとりして眺めたりこのような写真を撮ったりすることにたっぷり30分は費やした結果、無駄にした時間1800秒。
今後900回判子を押さなければ元を取れない計算。 生産性向上の名の下に軽く借金まみれになってしまいましたが、気にしないことにします。