年収の壁・支援強化パッケージ③_社会保険適用促進手当って何?
こんな方に読んでほしい!
◎静岡市近郊で営業中
◎従業員数51名以上
◎活気ある職場づくりを通して業績アップにつなげたい
◎扶養の範囲内で働くため、働く時間を調整している従業員さんがいる
◎ご年齢が30-50代の代表者様
こんにちは。社会保険労務士の杉浦です。
2023年9月、年収の壁・支援強化パッケージが公開されました。
これは、人手不足への対応が急務となる中で、短時間労働者が「年収の壁」を意識せず働くことができる環境づくりを支援するものです。
いわゆる年収の壁はいくつかありますが、今回の支援の対象となるのは、次の2つです。
○従業員100人超企業に週20時間以上で勤務する場合:「106万円の壁」
加入制度:厚生年金保険・健康保険(勤める会社の社会保険)
○上記以外の場合:「130万円の壁」
加入制度:国民年金・国民健康保険(市役所で手続)
いずれも、働く時間の長さや収入の多さによって、これまでパートナーの扶養に入っていた従業員さんが、自ら社会保険に加入することになります。
106万円・130万円を突き抜けて働くことができれば良いですが、加入後も引き続きこの金額近辺で働くこととなると、社会保険料の負担分で手取りが少なくなることが問題です。
また、特に1番目について、2024年10月には、従業員50人超の企業まで拡大されることが決まっています。多くのアルバイト・パート従業員さんが、働く時間などを調整することを検討することになるでしょう。
発表された年収の壁・支援強化パッケージは、そんな働くことの調整を避け、手取りが減らないような取り組みをした会社様への支援が行われるということです。
今回は、新しく定義づけされた手当、「社会保険適用促進手当」について見ていきます。
社会保険適用促進手当とは、これまで会社の社会保険に入っていなかった方が新たに入った場合に、その方の保険料負担を軽減するために、会社が追加で支給する手当のことです。
これは給与や賞与とは別で支給するものとし、新たに発生した本人負担分の保険料相当額を上限として、保険料算定の基礎となる標準報酬月額・標準賞与額の算定に考慮しないということになります。
この手当などにより、標準報酬月額(毎月引く社会保険料のベースになるもの)・標準賞与額(払った賞与から引く社会保険料のベースになるもの)の15%以上分を追加支給した場合、キャリアアップ助成金の対象となりえます。
【要件】
①対象者
標準報酬月額が10.4万円以下の方
②報酬から除外する手当の上限額被用者保険適用に伴い新たに発生した本人負担分の保険料相当額とする。
※令和5年度の厚生年金保険料率18.3%、健康保険料率(協会けんぽの全国平均)10.0%、介護保険料率1.82%の場合の本人負担分保険料相当額
③期間の上限
最大2年間の措置とする。
【具体的に】
・106万円の壁÷12ヵ月にあたる8.8万円から、①で設定された上限10.4万円までの方に支給される社会保険適用促進手当が、社会保険の算定から外してOKということです。
新しくアルバイト・パートさんが、どの等級で社会保険を取得することになるのかは、下の手当の上限額にも関わりますので、注意しましょう。
・上限額の根拠
8.8万円で社会保険に加入した方の自己負担額は、次のように求められます。
毎月の自己負担:(88000×0.183÷2)+(88000×0.100÷2)+(88000×0.0182÷2)≒約1325円/月
1年の自己負担:1325×12≒159000円/年
これが上限額ということになります。
・15%以上の根拠
1060000×0.15=159000円/年
きれいに自己負担額と同じになります。
・実例
昨日・一昨日、そして今回と度々登場した16万円の手当というのは、15.9万円の本人負担の社会保険料の補填という意味があったのですね。
これを社会保険の計算の基礎から外すことができることで、アルバイト・パートさん、会社様とも、2万円の負担が減ることになります。
社会保険適用促進手当の払い方についてや、上限を超えた部分の取り扱いなどについては、今後新たに情報が発表になると思います。引き続きチェックしていきましょう。
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